
今の勤務先は仕事は楽しいけど退職金制度がなくて将来が不安だ…
旦那が正社員なのに退職金なしなので、今から老後の準備をしておきたい…
また、今回のコロナ禍での景気悪化でボーナスカットはほぼ確定…。もしかしたら、退職金にまで影響があるかも…。
このように老後のことでお困りではないでしょうか?
たとえ今もし20代や30代だとしても、老後を安心して暮らすために今から早め早めに準備することはとても大切です。
ただ、漠然とやりはじめても必要以上に切り詰めてしまったり、逆に老後を迎えたときに足りないといったことになりかねません。
なのでまずはいくらほど必要になるのか計算して把握し、正しく老後対策を行うために必要なことをお伝えしますね。
私自身はいま30代後半で、わりと早い段階で老後のことも見据えながら18年間の間に30種類以上の投資を試してきました。
老後対策についてもいろいろ検討してみて、退職金がない会社の正社員だとしたら取るべき対策を2つに絞り込みました。
目次
正社員でも退職金がないのは珍しくない!退職金の有無だけを見るのは間違い!
退職金制度があるのは嬉しいですよね。ただ、退職金なしだから悪い!ということには実はなりません。
そもそも特殊!背景から読み解く退職金制度とは

退職金というと、一般的には退職一時金をさすことが多いです。つまり、辞めたときに一括で支給されるお金です。
この制度は実は結構特殊なんです。退職金制度は、終身雇用制がうまく機能するときに効果を発揮します。
一昔前のように終身雇用が当たり前の時代に、長く働いた人への労いの気持ちを込めて渡されていたのが退職金です。
また、退職金があることで優秀な人材が流出してしまうのを防げるという側面もありました。
しかし最近は終身雇用制そのものが崩壊してきていますし、転職も珍しくないため、退職金制度そのものも見直されつつあるんです。
そんな退職金ですが、みんながどれくらいもらってるのか気になりますよね?国や行政の調査結果が公表されているので、次はそのあたりのデータを見ていきましょう。
退職金の平均1983万円って本当?実は幅がすごいんです。

退職金の平均は1983万円というデータがあるのですが、ちょっと実感が湧きづらいですよね。
1983万円という数字は、厚生労働省の平成30年就労条件総合調査の結果を元にしています。
ただこのアンケートは常用労働者が30人以上の民営企業を対象にしたもので、さらに退職金制度が導入されている企業のデータです。
この調査結果だと、退職金制度があるのは80.5%なので、19.5%つまり5社に1社にはそもそも退職金制度がありません。
もっというと、東京都産業労働局が都内の従業員10~299人の中小企業を対象にした調査結果では、退職金制度に関して「制度なし」と回答した企業は24.2%でした。
会社の人数規模が少ないほど、正社員であっても退職金なしの割合は増える傾向にあります。こちらは定年の退職金が1145.6万円が平均のようです。
中小企業の定年退職時にもらえる退職金を、下の表にまとめましたのでご覧ください。
定年時退職金 | |
---|---|
運輸業、郵便業 | 748.6万円 |
生活関連サービス業,娯楽業 | 925.3万円 |
サービス業(他に分類されないもの) | 938.7万円 |
学術研究、専門・技術サービス業 | 1027.7万円 |
情報通信業 | 1170.8万円 |
製造業 | 1193.5万円 |
卸売業、小売業 | 1206.9万円 |
建設業 | 1241.3万円 |
不動産業、物品賃貸業 | 1325.1万円 |
金融業、保険業 | 1577万円 |
全体平均 | 1145.6万円 |
大企業と中小企業では、もらえる退職金が800万円以上違うのです。
もちろん中小企業の中でも勤続年数によってもかなり違いますし、業界によっても違います。
例えば金融業で1577万円なのに対して生活関連サービス業で925万円となっていて、その差はおよそ650万円あります!
さらにここ20年でもらえる退職金は1000万円減っているともニュース報道されてますし、これからも減ることを考えるとあまり過度な期待を持たないほうが良いですね。
退職金制度の代わりは?よく耳にする確定拠出年金(企業型・iDeCo)やNISAを簡単解説!

最近は退職金制度がない企業も珍しくありません。かといって、ただ単純に退職金がないだけだと将来不安ですよね。
退職金がないかわりに基本の給料が高かったり、株を付与したりする会社も増えつつあります。
また、最近よく耳にする単語で「確定拠出年金」や「つみたてNISA」がありますよね。
これも退職金のかわりに政府を筆頭に用意してくれている施策です。積極的な会社だと説明会を開いているところもあります。
これは断言できますが、いずれにせよ退職金に頼らずに自分で運用して将来に備えるということが、これからの時代を生きる上では必須になってきます!
詳しく書くと長くなってしまうので、ここではとても大切な「iDeCo(個人型確定拠出年金)」と「つみたてNISA」について簡単に説明しますね。
退職金のかわり①:60歳以降の老後資金はiDeCoで準備を!
60歳以降の老後資金の備えは、iDeCoの制度が活用できます。
iDeCoは10年以上積み立てていれば60歳から受け取れるじぶん年金制度です。受取可能な年齢になるまでは引き出せないので、強制貯金のようなものです。
貯金と決定的に違うのは、以下の3点で税制優遇されているところです。
- 掛金全額が所得控除
- 運用中の運用益が非課税
- 受取時に退職所得控除もしくは公的年金等控除
とくに掛金全額が所得控除になるのはとてもよく、所得税を納税しているのであれば大きなメリットになるでしょう。
仮に毎月1万の掛金を拠出するとします。年間で12万の掛金なので、所得税20%と住民税10%だとすると、30%の3.6万円が節税できたことになります。
じゃあ毎月10万円を掛金として入れたい!と思っても掛金には限度額があるので、堅実な節税対策で老後を迎えるまでの支出を減らすイメージです。
職業 | 掛け金上限 |
---|---|
自営業者 | 月額 6万8000円 年額 81万6000円 |
専業主婦(夫) | 月額 2万3000円 年額 27万6000円 |
公務員 | 月額 1万2000円 年額 14万4000円 |
会社員 (企業年金なし) |
月額 2万3000円 年額 27万6000円 |
会社員 (企業型確定拠出年金加入) |
月額 2万円 年額 24万円 |
気をつけるとすれば、もし専業主婦ならばあまりメリットがありません。というのも、所得税がかかっていないので節税効果がないからです。
そしてiDeCoは口座開設に2777円、そして管理費として年間2004円~7000円ほど(口座を開設した金融機関による)がかかります。
なので定期的な所得があって、毎月1万円以上積み立てられる収支の見込みがあれば活用してみましょう。
これで年間でいくらくらい節税できるかのイメージがわくと思います。さらに積み立てた金額を運用した結果は楽天証券のシミュレータがわかりやすいです。
1つだけ例として、年収500万円で毎月1万円の積立を40歳で開始したとします。(配偶者有、子ども2人)
年間3%で複利運用できて60歳で受け取るとします。
積立金額:2,400,000円
節税:362,000円
受取金額:3,283,020円
何もしないのとiDeCoで毎月1万円積み立てるのでは、60歳時点で節税効果と運用益合わせて120万円ほど違ってきます。
退職金のかわり②:しばらく使う予定はないけど節税しつつ運用する分は「つみたてNISA」を活用!
そして2つ目は「つみたてNISA」です。NISAとは別に2018年にスタートした制度で、こちらも税制優遇されていて資産形成にはおすすめです。
毎月積み立てた金額を、投資信託やETF(上場投資信託)で運用するという仕組みです。
つみたてNISAがいいのは口座開設や管理にお金がかからず、いつでも引き出せるという点です。
ここでiDeCoとの違いが気になりますよね?表にまとめてますので、見てみてください。
iDeCo | つみたてNISA | |
---|---|---|
年齢 | 20歳以上60歳未満 | 20歳以上 |
最大期間 | 60歳まで (運用のみ70歳まで) |
20年間 |
積立時 | 掛け金全額が所得控除 | 所得控除の適用なし |
運用中 | 運用益非課税 | 運用益非課税 |
払い出し時 | 退職所得控除または公的年金等控除 | 非課税 |
年間投資上限額 | 働き方や勤務先の年金制度により 14万4000円~81万6000円 |
40万円 |
投資対象商品 | 預金・保険・投資信託 | 金融庁が定めた基準を満たす投資信託・ETF |
平均利回り | 年利約3% | 年利約3% |
資産の途中引き出し | 原則60歳になるまで不可 | いつでも可能 |
口座開設手数料 | 2777円(税込) | 無料 |
口座管理手数料 | 年間2004円〜7000円程度 (金融機関による) |
無料 |
最低加入金額 | 5000円 | なし |
2つの制度は現状の余裕資金が多いのであれば、併用することも可能です。どちらか片方を選ぶとするならば、節税効果が高いiDeCoを優先すると良いでしょう。
iDeCoとつみたてNISAを理解してもらえたと思いますが、毎月いくら積み立てるかを決める必要があります。
それを決めるには、まずいまの収支の状態をちゃんと理解したうえで、老後にいくら準備しておけばいいかを把握する必要がありますよね。
なので、次は老後に具体的にいくらくらい必要なのかについてお伝えします。
何よりまずは老後にいくら必要か把握することが大切!
老後の生活といっても65歳から90歳まで生きたら25年もあるので、すべてのイメージをするのは難しいですよね。
ただある程度は毎月どれくらい必要なのかの予測をたてることは可能なので、それを把握しましょう!
老後でいくら使うのかを検証!ゆとりある生活を送るには毎月○○万円?
結論から言ってしまうと、夫婦で平均的な生活をするために月28万円、ゆとりある生活をするために月35万円必要です。
この金額は総務省の家計調査をもとにしています。内訳はおよそ次のようなグラフになります。
この記事ではこのデータをもとに計算していきますが、ご自身の生活水準に合わせてアレンジしてみてくださいね。
よく言われる「老後を迎えるとき3000万円の貯金」では足りない?必要な老後資金を計算してみましょう!
老後の支出が把握できたと思うので、次は老後の収入を見ていきます。
老後の収入は「年金」「退職金」「労働収入」「その他」です。
まずもらえる年金は老後を迎えるまでの働き方でかなり変わってきます。上の図で3パターンに分けていますので、自分に合いそうなところを見てシミュレーションしてみてください。
①会社員と専業主婦の場合
年金以外で準備しないといけない金額は、平均的な生活のためには3000万円、ゆとりある生活のためには5100万円です。
いわゆるモデル世帯と呼ばれている構成で、もらえる年金は月20万円ほどです。現状で22万円ほどもらえますが、少し余裕をみて20万としています。
加えて、急な介護費やリフォーム費の支出に備えて300万円×2人の600万円を予備費として計算しています。細かいことを言い出すとキリがないのですが、妥当なところだと思います。
②会社員の共働きの場合
年金以外で準備しないといけない金額は、平均的な生活のためには1500万円、ゆとりある生活のためには3600万円です。
内閣府男女共同参画局の平成30年の調査によると、平成9年以降は共働き世帯のほうが①のような会社員+専業主婦の世帯数を上回り、平成29年でおよそ2倍となってますます開きが出ています。
会社員の共働きの場合ですと、育児休暇や雇用期間にもよりますがおよそ25万円ほどは毎月年金をもらえる見込みです。
年金で生活費の大半がまかなえる可能性は高いので、少し安心はできますね。
③自営業の場合
年金以外で準備しないといけない金額は、平均的な生活のためには5400万円、ゆとりある生活のためには7500万円です。
もらえる年金が厚生年金ではなく国民年金のため、ぐっと減ります。そして退職金もないので、老後を迎えるまでにしっかり準備しておく必要があります。
それぞれのパターンで平均的な生活とゆとりある生活に必要な金額をそれぞれ表に改めてまとめておきます。
平均的な生活 | ゆとりある生活 | |
---|---|---|
①会社員と専業主婦 | 3000万円 | 5100万円 |
②会社員の共働き | 1500万円 | 3600万円 |
③自営業 | 5400万円 | 7500万円 |
夫婦共働きで退職金があればそれなりにまかなえますが、正社員でも退職金なしが当たり前になってくるとそれ以外の収入源が大切になってきます。
ゆとりある生活をしようと思えばなおさらです。旅行にも行けたらいいですし、孫がいれば余裕をもって可愛がってあげたいですよね?
ちなみに上記は持ち家の場合です。老後も賃貸で住む予定であれば、家賃の分を蓄えておくか稼ぐ必要があります。
もし家賃10万円の家に住むのであれば25年で3000万円が必要です。これは忘れずにシミュレーションしましょう。
いまの時点で、完璧に準備できている!という方は少ないと思います。
というのも、例えばメットライフ生命が2018年に14000人を対象におこなったアンケート結果をみてみましょう。
もうすぐ老後をむかえる50代でさえ貯蓄平均は1000万円を超える程度ということがわかります。
しかも平均値は富裕層に引き上げられる傾向にあるので中央値はもっと低くなります。
ただ、もちろんすでに老後をむかえていたとしてもやれることはあります!
ではいよいよ具体的にどんな対策術があるかをお伝えするので、始められることがあれば早めに行動してみてください。
退職金がもらえなくても老後を生き抜くためのライフプランを公開!
- 老後対策術①:労働市場価値を高める
- 老後対策術②:資産運用は必須
やるべきことは大きくわけると上の2つです!それぞれについて補足して説明しますね。
老後対策術①:労働市場価値を高める

まずやれることは、労働市場価値を高めるということです。社会・業界・会社で信頼を勝ち取ることでお金がついてきます。
正社員であれば将来を嘱望されている!転職も視野に入れつつ社内アピールをしっかりしましょう。
正社員として働けている時点で、その会社で何かしら期待されています。
退職金がないのであれば今の会社より条件の良い会社に転職するのものありですね。
必要とされている人材であれば、転職を引き止められて給与アップする可能性もあるので、社内にもしっかりアピールしていきましょう。
転職は周りから情報を集めつつ、つながりをあたると意外と好条件で迎え入れてくれるところが見つかります。
もしエージェントをつかうのであれば、ハイキャリアならビズリーチ、数をたくさん当たりたいならリクナビNEXTを利用すると良いです。
老後も働けるなら働きましょう!
老後も働けるなら働くことで、お金の面ではかなり楽になってきます。
例えば老後は年収300万円だとしても、月々25万円が年金以外で入ってきます。
さらに年金を納め続ければ、本当に働けなくなってしまったときにもらえる年金が増えるので、ゆとりができやすくなります。
ほかのメリットとしては、家庭以外に社会的なつながりができるので生きがいが生まれたりボケ防止になったりします。
老後対策術②:資産運用は必須

そして老後対策としてやるべきことの2つ目は資産運用です。
先ほどもあげたメットライフ生命のアンケート結果を見ると、持っている資産が低い人ほど資産運用が特別なものだと思っている傾向があるようです。
ただ、今や銀行金利は0.01%といった超低金利で、1年間分の利息はATMを1回時間外利用しただけで吹き飛びます…
さらに日本含めて世界はゆるやかにインフレしていくので、貯金一辺倒だとどんどん目減りしていきますので危険です。
もしまだ資産運用をしたことがないが、何か特別な意識を持っているのであれば、まずはこの記事で紹介したiDeCoやつみたてNISAをはじめてみて、資産運用に慣れましょう。
そして月々の収支がプラスで300万円以上のまとまった預金があるのであれば、投資することで老後を豊かに過ごせる確率がぐっと上がります。
とくに正社員であれば社会的な与信があるので不動産投資など、投資できる幅も広がりやすくなります。
資産運用は、運用する金額によって投資先のポートフォリオがかなり変わってくるので、詳しくは運用額ごとの記事を参考にしてもらえると嬉しいです。
正社員でも退職金なしが普通の時代を生き抜くために
なるべく簡単に解説したつもりでしたがいかがでしたか?
正社員だから安心、退職金があるから安心、というのは過去のものです。
特に、今回のコロナ禍での景気悪化でボーナスカットはほぼ確定です。もしかしたら、退職金にまで影響があるかもしれませんね。
また医学も発達し、どんどん長生きになっていきます。
つまりますます自分自身で老後も含めた人生設計をしていかなければいけない時代です。
ちまたのFPも、もちろん私も、これからの時代を一緒に生き抜いていくわけで、退職&老後を経験したわけではありません。
ただ労働市場価値を上げることと資産運用をするということは必ず必要になってきます。
やれることをしっかりやりつつ、お金の悩みを減らしていきましょう!